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世界の中でも最も古くから漆を使ってきたとされる日本。その歴史は縄文の前期にまで遡るといわれます。
すなわち漆と日本人とは固有の関係といってもよく、なるほど日本人である私が、今日も夢中に漆を塗り続けているのも太古より受け継がれた記憶の仕業なのかと思うと納得がいきます。
私が漆を塗り始めて幾年月、その扱いの奥深さから時に振り回され、幾度となく苦しめられてきました。
しかし、成功した上塗りの美しくて艶かしい塗肌を見るとき、ついついそれまでの労苦を忘れ、また仕事に励んでしまうのです。
漆の難しさと美しさ、そして不思議さは話せば切りがありません。
もし、「では何故人々が悠久に漆との関わりを続けてきたのか?」と問われたならば、その答えは自分の中では解かれている気がしており、紛れもなく私が漆に魅了されているのだと認めざるを得ません。
それは同時に自然調和、伝統的文化の軽薄化が叫ばれる今、こうして漆と関わることで何か忘れてはいけない大切なものを教えられているようでもあります。
先人達の魅了してきた漆や営みを想像し、そして自分の感じた漆の魅力を少しでも皆様にお伝えできればとおもっています。
後生にも繋いでいけるよう、受け継がれた記憶に身を任せ今日も漆と向き合います。
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